23歳、ひとりの先輩コーチとの出会い
8年間のトンネルに、突然、光が差し込んだ日のことを、いまでも覚えています。
23歳のとき、わたしは テニススクールでコーチとして働いていました。
そこに、Kコーチという先輩がいました。
Kコーチは、武術・武道を研究していて、そのエッセンスをテニスに活かすという、当時のわたしには想像もつかないアプローチをしている方でした。
そのKコーチから教わった言葉が、わたしの人生を変えました。
「死ぬときが一番強い」
武術・武道の世界では、そう言われているというのです。
最初は意味がわかりませんでした。
スポーツの世界では、20代、30代がピークで、あとは衰えていく。 それが常識です。
でも武の世界では、歳を重ねるほど強くなり、死ぬときがいちばん強い。
そんな世界があるのか、と衝撃を受けました。
「力を入れる」から「力を抜く」へ
Kコーチから教わったことの核心は、「力を抜くことの重要性」でした。
それまでのわたしは、トレーニングを中心に行なってきました。 つまり、「どう力を入れるか」ばかりにフォーカスしてきたのです。
力を抜く。
それは、わたしにとって、まったく逆のアプローチでした。
Kコーチの技術指導と施術を受けながら、わたしは練習中も、コートの外でも、力を抜くことを意識するようになりました。
すると。
8年間、何をやっても消えなかった痛みが、3ヶ月ほどで痛くなくなったのです。
病院でも、リハビリでも、トレーニングでも消えなかった痛みが、です。
このとき、わたしは確信しました。
身体からのアプローチで、人の可能性は無限大だ。
そして思ったのです。 この体験を、わたしと同じように苦しんでいる人に届けたい、と。
これが、わたしがこの道に進んだ原点です。
それでも、試合になると力が入った
ただ、話はここで終わりませんでした。
力を抜くことで、痛みは消えました。 パフォーマンスもどんどん上がっていきました。
ところが、
いざ試合になると、特に自分と同レベルか、それより上の相手と対戦すると、どんどん力が入っていくのです。
あんなに練習したのに。 あんなに脱力を意識してきたのに。
当時のわたしは、こう考えました。
「まだまだ練習や稽古が足りないんだ」 「脱力が足りないんだ」
そして、練習でも、コートの外でも、より力を抜くことを意識しました。
そんな時間を、数年間、過ごしました。
真面目なあなたなら、もう氣づいたかもしれません。
これは、あの8年間と同じ構造です。
「足りないから、もっとやる」
このループに、わたしはまた入りかけていたのです。
意識して頑張る、というアプローチそのものに、何か限界があるのではないか。
その答えに出会うのは、もう少し先のことでした。
今日からできる小さな一歩
今日、何かひとつの動作をするときに、自分の身体のどこに余分に力が入っているか、観察してみてください。
歯を磨くとき。スマホを持つとき。歩くとき。
力を抜こうとしなくて大丈夫です。 ただ、「あれ、こんなところに力が入ってたんだ」と氣づくだけで十分です。
力が入っていることに氣づいていない方がほとんどです。 氣づくこと自体が、最初の一歩です。

